空のいろ

本、映画、TVドラマの感想を書いてます。悪性リンパ腫になってしまいました

アガサ·クリスティ著「オリエント急行の殺人」、映画やドラマより先に読むのをお薦めします

2017.12.23.
深冬です。

この冬新たな映画「オリエント急行殺人事件」が公開されましたね。

ミステリー好きで、「オリエント急行殺人事件」ってどんな話か知らないなぁという方 !
それはとってもラッキーです。

ネタバレされる前に、アガサ·クリスティの「オリエント急行の殺人」を読んでみてください。
この話はとても有名なので、どこで比喩的に使われているかわかりません。ついうっかり犯人を知ってしまうという悲劇が、よく起こるのです。

かくいう私もその一人。
なので、映像作品しか見たことがなかったのですが、少々興味を引かれる事があり、原作である小説を読みました。

読後、強く思ったのは、「ネタバレされる前に小説を読みたかった!」です。

でも、犯人を知っていても興味深く読めます。
なんといってもポアロさんのキャラに、作者の容赦のなさを感じます。
かなり「痛い」です。
でも、そこが良い。

ストーリーはある意味、分かりやすいです。
事件後、乗客が一人ずつ証言していくかたちで進むからです。
どんな車輌で、どの部屋に誰がいたかの図面も出てきます。
作中、ポアロさんは人物リストや、疑問点リストを提示してくれます。
でもね·······
自分で時系列表を作って見るのもたのしいかもです。
ポワロさんが聞き出した情報をきれいに並べるのも几帳面さんには楽しいかもです。


読んでみようと思われた方。

オリエント急行の殺人」は複数の出版社から出ていますが、ハヤカワ文庫の「クリスティ文庫」で読まれる方は、ご注意を。
アガサのお孫さんのメッセージ文が、本の一番最初に出て来ますが、これを読むとネタバレします
すっ飛ばして、即、小説へ行くことをお勧めします。

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


少し重い話になりますが、物語はシリアのアレッポの駅からスタートします。
もし私が中学生の時に読んでいたら、「シリア」も「アレッポ」もそれってどこだろ、まあいいか、と思っていたと思います。
でもここしばらくのシリア状況は耳に入らずにいられません。何かこの出だしの一行には胸がつまったような気分にさせられました。
しかも物語は、ポワロさんがフランス軍の事件を解決してロンドンに帰るところから始まるのです。
物語設定は、第二次世界大戦前と思われますが、フランス軍が駐在し政権維持をしていたのなら、その事をシリア人はどう思っていたのか、少しブルーな気分になりました。

が、それは現代の私たちの感傷でしょう。
物語は、当然現代の泥沼状態は全く感じさせません。
フランス軍の見送り役と、汽車の出発まで不毛な社交辞令の掛け合いを続けて、これが結構面白い。笑えます。ポワロさんはこうでなくては!です。

布石は見落とさず全部拾って、解決に挑んでください。
検討を祈ります。


映像作品は、1974年のイギリス映画が有名です。
が、これもネタバレスタートな気がするのは私だけでしょうか······。

デヴィッド·スーシェがポアロ役のイギリスのTVドラマでは、原作とは違う重みがありました。これは、ポアロ最後の事件へ向けて、ドラマのファイナルシーズン内での布石だったのかもしれません。

それに対して、肩の力を抜いて観ることができるのは、2015年にオンエアされた三谷幸喜さん脚本のTVドラマ。
二夜連続ということで、前後編構成でしたが、原作ストーリーは前編のみ。
後編は、犯人側の視点で事情が描かれるというオリジナル展開。
前編で、ポアロの滑稽さがやけに大袈裟で浮いてるなと思っていたのですが、後編を見て納得。三谷さんらしいユーモアあるストーリーでした。

映像作品の見比べもお時間があればいかがでしょう。



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