空のいろ

本、映画、TVドラマの感想を書いてます。悪性リンパ腫になってしまいました

アガサ・クリスティ著「アクロイド殺人事件」ドラマ見るだけじゃもったいないです

2018.4.14.

深冬です。

今日、三谷幸喜脚本のドラマ、「アクロイド」もとい「黒井戸殺し」ありますね。
夕方、新聞のテレビ番組欄を見るまで知りませんでした。不覚。

3月にテレビでクリスティのミステリー2夜連続ドラマを見たので、クリスティの推理小説が読みたくなり、本棚に「アクロイド殺人事件」があったので、まずは基本に立ち返りましょうと、我ながら少々ズレたことを思いつつ再読したところでした。

クリスティファンはたいてい「アクロイド殺人事件」を読んでいるはず。
アガサ·クリスティの代表作の一つです。

昔、オチを知らずに読んだ私は、幸せ者です。
どいうこと?! と思ったのをよく覚えています。

オチを知っていても、面白く読みました。
大人になって多くの情報を読み取れるようになったからでしょう。


探偵はポワロさんです。

再読の感想は後にして、まずはあらすじを。



物語は、語り手である医師のシェーパードが、ファラーズ家の未亡人の死亡確認をし、家に帰るところから始まります。
家では姉のカロラインが待ち構えていて、シェーパード氏は、気が重い。姉の情報収集力はすごいのです。
今朝もその情報網でにファラーズ夫人が亡くなっているのを知っていました。そして持論を展開します。

姉曰く、一年前に心臓麻痺で死んだ夫は、実は彼女が毒殺したのであり、その罪に耐えかねて自殺したのだと。

けれど現実には遺書もなく、自殺とは言い切れない状況です。
姉が撒き散らすであろうゴシップにうんざりしつつも、シェーパードは回診に出かけます。その途上アクロイド氏にばったり出会い、相談をしたいと申し入れられ夕食の約束をしました。

このキングス・アボット村には二つの名家があります。
アクロイド家と夫人が亡くなったばかりのファラーズ家。
姉情報では、アクロイド氏とファラーズ夫人は彼女の夫が死ぬ前から親しく、今頃はすでに婚約しているのでは、という噂もあります。

夕食に集ったのは、アクロイド氏の亡くなった弟の妻とその娘である姪、秘書、アクロイド氏の長年の親友という面々。
アクロイド氏の亡妻の連れ子である義理の息子は、現在ロンドンにいると聞かされます。けれど昨日彼を見かけたシェーパード医師は、若干の齟齬を感じたものの食後に書斎で二人きりでアクロイド氏から驚くべき話を聞くことに。

なんとファラーズ夫人は本当に夫を毒殺していました。
婚約を求めたアクロイド氏に、彼女が告白したのです。しかもファラーズ夫人はその事を第三者に知られて恐喝されていました。
この話を聞かされたアクロイド氏は彼女を受け入れることができませんでした。それが自殺へと追いやることになったとを後悔していました。
恐喝者が誰かはわからない。探しだして糾弾したいが、そうすると彼女の罪も世間に露呈してしまいます。

どうすべきか、アクロイド氏は苦悩していました。
そこへ届いた手紙の中に、ファラーズ夫人からのものがありました。遺書かもしれない。

シェーパード医師は、その手紙をアクロイド氏が一人で読めるよう配慮します。

驚きの相談事をやり過ごしたシェーパード医師は帰宅の途中、あやしい男にアクロイド氏の家がどこかを聞かれます。無事に家にたどり着いたものの、情報が欲しい姉に捕まり、つきあわされました。

やっと解放された時、電話のベルが鳴ります。アクロイド氏の執事からで主人が死んでいるといいます。
慌ててアクロイド氏のところへ戻りますが、いつも通り落ち着いていて何かあったようではありません。
執事も電話をはっきり否定。
念のためアクロイド氏の無事を執事と二人で確認することにしました。

書斎の扉は鍵が差されたまま閉まっていて開きません。呼びかけてもアクロイド氏からの返事がないことに、ドアノブを壊して安否確認すると決めます。

そこでは、アクロイド氏が刺し殺されていました。
ファラーズ夫人を恐喝していた者の名があったかもしれない手紙が無くなっています。

そして、警察が呼ばれました。

肝心のポワロさんですが、事件発生前に「かの名探偵」とは知られず登場します。
ファラーズ医師のお隣に数ヵ月前引っ越して来た彼は、ファラーズ姉の情報網をもってしても仕事を引退してカボチャ作りをしている外国人としかわかりません。
でもファラーズ医師との初対面となる時の奇行とか、親友を散々にこき下ろすあたりは···。

彼の正体がわかるのは、アクロイド氏の姪フロラが捜査の依頼をして来たからです。アクロイド氏がこの村を引退後の住み処としてポワロに紹介していたので姪は彼が名探偵と知っていたのです。

現在、警察の疑惑の目は、所在のわからないアクロイド氏の義理の息子ラルフに向いています。
フロラはポワロに、ラルフは犯人ではないと主張し事件解決を願います。
ラルフは、フロラの事実上の婚約者なのです。

もちろんポワロは引き受け、事件に詳しいファラーズ医師に協力を求めました。

捜査の終盤、ポワロは関係者全員に「隠していること全てを言いなさい」と恫喝。これで個々に告白してくるのですが······。

告白は、どうでもいいような言い訳から驚くような事まで様々。

読む方の楽しみを奪わないため詳しくは述べませんが、それでもラルフの行方はわかりません。

アクロイドの家までの道を聞いたあやしい男は誰なのか。
ラルフはどこに行ってしまったのか。

そして、ポワロは犯人と対峙します。



これ以後は少々ネタばれありの感想です。

「犯人」についてはいろんな人が語っているので、他のことを。

登場人物それぞれに、いろいろと思いつつ読み進めました。

階級で区切られることによる常識の違いも興味深いです。

読みながら一番印象が変わったのが、アクロイド氏の姪フロラ。
ポワロを訪ねてくるところとか、行動力があって良い娘やん、と思っていました。
けれどアクロイド氏の遺産が入るとわかったときの浮かれっぷりや、行方不明のままのラルフとの婚約を新聞発表すると強硬な態度で周りを困らせる示す非常識さで、これって残念お嬢様なんじゃないのと思い始めたところで凄い事実が発覚···。それでも幸せを掴むんだから···ため息です。

正体不明なところがあった小間使いアーシュラ。彼女はフロラとは真逆。肝の座った自立を目指すお嬢様でした。心の中で拍手です。彼女はこの先も苦労しそうですが、自ら挑んでいくでしょう。

フロラとアーシュラ。楽なのはきっとフロラの人生の方だと思いますが、もし私が選べるのならアーシュラの立ち向かう人生かな。

ポワロさんは安定の変人ぶりと、良い保護者の顔をみせてくれます。
ヘイスティングス大佐は登場してないのに気の毒な形で存在感を示してます。


読書好きさんには、ドラマみるだけなんてもったいないですよ、と言いたいお薦め推理小説です。

翻訳はたくさんありますが、私は、創元推理文庫の大久保康雄訳を読みました。

余談ですが、うちの本棚にあったこの本、1959年初版で1970年23版、160円です。物価の違いにびっくりです。

アクロイド殺害事件 (創元推理文庫)

アクロイド殺害事件 (創元推理文庫)