空のいろ

本、映画、TVドラマの感想を書いてます。悪性リンパ腫になってしまいました

ルイス・サッカー著「穴HOLES」が、私にとって面白かった理由

2017.12.28.改稿
深冬です。

ルイス・サッカーの「穴HOLES」を教えてくれたのは、甥でした。

彼が10才くらいの時だったでしょうか。
実家に遊びに来ていたのですが、食卓に出されたサラダを見て何故かテンション高く言ったのです。
「玉ねぎ!」、と。

どうやら「穴HOLES」を読んだばかりの頃のようでした。

甥は、「玉ねぎ食べると強くなる。元気になる。」という小学男子らしい残念感想、ではなく、熱い感想を語ってくれたのですが、話がよくわからない······。

父親である私の弟が「面白い」と保証したので読んでみると·····


説明されてもわからない理由が、よくわかりました。

すごく面白い!
でもあえて言います!
どれだけ行間読まなきゃいけないの?
読者は、作者に挑戦されているのでしょうか?


故に、あらすじを語るのは難しいのですが。
少し頑張って説明すると。

主人公は、いじめられっ子のスタンリー・イェルナッツ。
彼の父親は発明家だけど成功しそうにない。
母親は良い人。
貧乏で大変なのに、彼らが明るいのには、理由がある。
イェルナッツ一家に代々伝わるジョークのおかげ。

『上手くいかないことが起こるのは、スタンリーのひいひいじいさんのせい。』

でも、ある日、深刻な事態が起った。
スタンリーは、スニーカー泥棒の濡れ衣を着せられ、更正施設に入れられることになったのだ。
その施設でする事はひとつ。

穴を掘ること。

スタンリーは、毎日穴を掘り、他の子どもたちと不器用なやり取りをしていくなかで、特にゼロという名の少年とつながりが深くなる。

なぜ穴を掘るのか。
それは、スタンリーの現状と平行して語られる複数のストーリーによって、徐々にわかっていきます。


イェルナッツ家で冗談にされている、ひいひいじいさんの話。


スタンリーの回想で登場するひいじいさんの話。


玉ねぎを売るサムと学校の先生キャサリンの話。



そして、スタンリーが、受け身でなく、自分から行動を始めた時、イェルナッツ一家に代々伝わるジョーク『上手くいかないことが起こるのは、スタンリーのひいひいじいさんのせい。』に端を発する不運が、変わっていく。

最後は冤罪もはれてハッピーエンド。


あぁ、あらすじ説明できてません。ごめんなさい。


複数の時代の話で組み立てられる筋立ては、読んでいてすごく楽しいです。それは確かです。

ただ。
最初に書いた通り、行間に埋もれている情報が半端ないです。
この本によって知識を得るというより、最初に知識がないと気づけない深さや重みがあるのです。
分かりやすいところでは、アメリカの人種差別の歴史とか。

アメリカ人ならピンとくることが、日本の子どもにはわかりにくいのではないかと感じます。

それも児童文学の醍醐味かもしれませんが。

再読するたびに、発見があるでしょうし。


本当は、理屈は不要なのかもしれません。
この話の魅力は、特別なところは何もない男の子スタンリーが、迷いながらも努力をして、前に進み続けること。友だちを得て、力の限り踏ん張るところですから。


でもやっぱり、上から目線になるのが大人の悪いクセ。

本を読んでから、私は甥に聞いてみました。
「ゼロは、おかあさんと再会できてよかったね。」
すると彼はきょとんとした顔をして、言ったのです
「え? おかあさん、出て来た?」
と。
やっぱり拾えてない。残念。まだ10歳だし、私もその頃なら同じだったかな。

高校生になった甥は、私とこんな会話をしたことを忘れているでしょう。
でも、ちょっと楽しいと思いませんか。


キャサリン先生が、ケイト・バーロウと同一人物と気づいているかな?

人種差別問題がどんなものだったを知るのはいつだろう。

この本を読んで身近に痛みを感じるのはいつ?

次に「穴 HOLES」を読んだ時、子どもの頃に気づけなかった事をどれだけ拾うだろう。


子どもを持つ親御さんは、我が子の成長をリアルに感じられる一冊になるかもしれません。


 
最後に。
私が文庫本を買ったと弟に言った時、こう返されました。
「原書にしたらよかったのに。文章、難しないから読めるで。」
ということなので、英語が好きな方は、原書にチャレンジされてはいかがでしょう。
目安としては、TOEIC700を超えていたら、楽勝みたいです。
私は、400ちょっとしかないので、挑戦はせず、その分、他の本を読む事に致します。


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穴 HOLES (講談社文庫)

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